だから私は、この会社を更新したい

前回までで、私はこの会社が今まで続いてきた理由と、その強さが環境の変化の中では限界にもなり得ることを書いてきた。

多品種小ロットに対応できること。
社内である程度工程を持てること。
現場を任せられる人がいたこと。
分業によって、全体を見なくても仕事が回ること。

どれも、この会社を支えてきた強みだったと思う。
そして実際、それがあったからこそ、ここまで続いてきた。

だから私は、今までの会社を否定したいわけではない。
むしろ逆で、今まで成り立ってきた理由はきちんと認めたいと思っている。

そのうえで、今の自分は、この会社をどうしたいのか。
今回は、そのことを一度整理しておきたい。

残したいものは、たしかにある

この会社には、残したいものがある。

小回りの利く対応。
現場で判断して動ける柔軟さ。
多少の無理があっても、何とか納めてきた粘り強さ。
きれいに言語化されていなくても、現場の感覚として積み上がってきたものは確かにある。

最初から整った会社だったわけではない。
仕組みが先にあり、その通りに人が動いていたわけでもない。
むしろ、人が現場で埋め合わせながら、会社を何とか成り立たせてきた。

その積み重ねを、軽く扱いたくはない。
今ある会社は、長い時間の中で持ちこたえてきた結果でもあるからだ。

ただ、同じやり方の延長では足りない

一方で、そのままでは残せないものがあるとも感じている。

時代が変わる中で、人が働く理由も、会社との関係も、以前とはかなり違ってきた。
単純に指示する側と、指示される側という関係だけで会社を回せる時代ではなくなっていると思う。

会社の側も、人の側も、それぞれの視点から仕事を考えなければ続きにくい。
だからこそ、今までのように現場の経験や口頭のやり取りだけで支える形には限界がある。

口頭で伝えること自体が悪いわけではない。
ただ、それだけでは蓄積が残らない。
せっかく積み上がってきたやり方や判断が、形にならないまま人に貼りついてしまう。

今まではそれでも回ったのだと思う。
だが、引き継ぐことを考えたとき、それでは弱い。

同じやり方の延長では足りないと感じるのは、今までを否定したいからではない。
今までの蓄積を、次にも残る形にしなければならないと思うからだ。

私が変えたいのは、人ではなく会社の運び方である

ここで、自分の中ではっきりしたことがある。

他人はいくら言っても他人で、自分の意思だけで変えることは難しい。
考え方も、動き方も、最終的には本人のものだからだ。

だが一方で、会社の仕組みは変えられる。
少なくとも、立場がある以上、そこに手をつけることは自分の意思でできる。

そう考えるようになってから、少し視点が変わった。
誰かを理由にして、できないことを数えるより、会社として何をやるべきかを考えた方が建設的だと思うようになった。

いつまでも、誰が悪い、誰のせいだ、で止まり続けるのではなく、
会社としてどうするかを考えたい。

たぶん私が変えたいのは、人そのものではない。
仕事の渡し方、共有のされ方、判断の残り方のような、会社の運び方のほうだ。

今までは、誰かが分かっていれば回った。
誰かが気を利かせれば、つながった。
誰かが埋めれば、大きくは崩れなかった。

だが、それでは引き継ぎにくい。
引き継ぎにくいものは、続けたいと思っていても続けにくい。

会社として考えられる状態をつくりたい

自分が目指したいのは、常に仕事を「会社として」考えられる状態だ。

作業そのものは、ひとつひとつを見ればそこまで複雑ではないことも多い。
それでも人を入れにくいのは、仕事の責任や判断が個人に強く帰属している部分が大きいからだと思う。

つまり、作業が難しいというより、
その作業の周辺にある判断や段取りが、人ごとに違いすぎる。

そこが整理されないままだと、
新しく入る人にとっては覚えるべきことが見えにくくなり、
教える側も結局は「見て覚えてほしい」という渡し方になりやすい。

だから必要なのは、もっと分かりやすく共有できる形だと思っている。
最低限の作業手順や流れが見えること。
誰が見ても、ある程度は追えること。
口頭で補わなければ伝わらない状態を少しずつ減らしていくこと。

そうやって土台を共有しながら、そのうえで技術的に高いことができる会社にしていきたい。

単純な仕事まで属人化した会社ではなく、
共有できることは共有したうえで、
本当に人の経験や技術が必要な部分に力を使える会社のほうが、これからは強いのではないかと思っている。

更新とは、引き継ぎ直すことなのだと思う

更新という言葉には、少し強い響きがあるかもしれない。
だが、自分の感覚としては、今までを壊して別の会社にしたいわけではない。

残したいものはある。
今まで成り立ってきた理由もある。
だからこそ、それを次にも成り立つ形に整え直したい。

昔のやり方をそのまま守ることが、過去を尊重することとは限らない。
むしろ、残したいものがあるなら、そのままでは残せない部分を見直す必要がある。

承継とは、ただ受け取ることではなく、次に渡せる形にし直すことでもあるのだと思う。

その意味で、私にとって更新とは、改革というより引き継ぎ直しに近い。
そしてそれは、考え方だけを整えれば済む話でもない。
仕事の流れや共有の仕方を、実際に変えていくことでもある。

今までの会社を否定するためではなく、この先も続く形に整えるために、私はこの会社を更新したい。


※本記事は特定の人物・企業を批判するものではなく、親族経営・事業承継の現場で起きやすい構造を整理したものです。

※現在、親族経営や事業承継の現場で使える思考整理用のメモやチェックリストを準備中です。

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